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zoom RSS こんな夕暮れに

<<   作成日時 : 2017/08/02 22:21   >>

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お客のいないてれやカフェ。
一人でぼうっとカウンターに座っていると
先生がステッキを突いて店に入ってきます。

「やあ」

帽子を取りながら

「お前がサボってるだろうと思って見張りに来たよ」

そう言いながら、靴を脱いで、靴下も脱いで
土間から座敷に上がります。
「コーヒーをカップに半分」
そう注文して、ソファにねっころがります。
そして僕に向かって、ずいぶん昔から知っている友人のように
人懐っこい顔で微笑みかけます。
「どうだ?」と聞くので、
「・・・別に」とこちらが言い淀むと
「つまらん奴だな」と笑います。

文芸学者である先生は
いつも本を持ち歩いている。

自分でもたくさんの本を出している。

時々「この本読め」と貸してくれようとしますが、
僕が「本読むの遅いんですよ」というと、
「だったら言って聞かせてやるよ」
そう言って、ずいぶんたくさんの話をしてくれました。
その話を自分一人で聞くのは
もったいないから、みんなにも聞いてもらおうと
始めた講座は11回を数えました。
一つのテーマが2、3ヶ月に及ぶものでしたから、
ずいぶんたくさんの時間を
僕らと講座に費やしてくれました。

それまでも僕はこっそり物語を書いたり、
歌を書いたりしたことはあったのですが、
もう、そんな才をまともに取り合うこともなく
ほったらかしにしていました。
でも、先生はもう一度ネジを巻いてくれました。

「最近、何か書いてるか?」

こんな夕暮れ。
コーヒーを飲み終えた
先生はまたステッキを持って
家路につきます。

玄関先まで見送ると
「じゃあな。サボるなよ」と微笑んで歩き出す。
夕日に向かって遠ざかる
その背中はいつまでも広いままでした。

そして、先生は振り返ることなく
そのまま歩いて行ってしまいました。

8月6日の朝、先生を偲ぶ会をしますので
お店をちょっと閉めさせていただきます。

お昼過ぎにはまた開けますので。

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